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黒衣森の、よく晴れた昼時。

風がやわらかくそよぎ、陽光は葉を透かして白金色に輝く。少し暑いくらいの陽射しのはずだが、鬱蒼とした木々のベールが、その暑さを遮っていた。
それが川辺ならばなおさらだ。涼やかな空気が、青々とした芝、黒く重い土を湿らせ、森の孕む生命力を鮮やかに描いている。
水面はきらきらと穏やかに輝き、緑の景色を鏡のように映し出す。その通りに“鏡池”と呼ばれる、川がぱくりと広がった地点には、少しだけ木を切り拓いて作られた桟橋と、東屋、小屋があった。川を使って貨物や人を運ぶための、小さな係留所である。グリダニアの民であろう人々が、数人、のんびりと働いている。

アウラの青年は、シンプルに作られた木の門の手前で、黒チョコボの手綱を引き、慣れた動作でその背から降りる。働く人々の視線を受けながら、彼は違う人影を探して、周囲を見渡した。

今なお、川の上を滑るように吹く風は冷やされて、心地よい温度を桟橋から陸まで運び込んでいる。その涼風に、麝香が微か混じっただろうか。青年の、旅で研ぎ澄まされた五感に囁きかける、甘い香りと、琴の音。
燃えるような赤が彼の視界に捉えられたのは、それから間もなくのことだ。深緑に溶け込むようにして、桟橋の縁に腰かける女の姿があった。無防備に陽光に晒される肢体は、ヒューラン族のもの。女は左手に琴を抱えて、六弦を掻き鳴らしながら、好きに歌い狂っているようだった。

青年は小さく会釈をし、人々の間をすり抜ける。
彼の斜め後ろを着いていく黒チョコボ――――エレゼンに見合うそれよりも、更に大柄な体躯である――――に、何人かは目を丸くした。しかし、人々は青年がヒューランの女の方へ向かっていることに気付くと、少しだけほっとしたような顔になった。
彼女の纏う香り、紡ぐ音色と歌声はひどく魅惑的ではあったが、彼らの仕事中にふらりと現れ、突然歌い始めた彼女に、人々は少しだけ戸惑っていたのである。
とはいえ、彼女の横顔の美しさは、彼らが声をかけるにはどこか憚られた。青年が彼女の紡ぐメロディーを止めてくれるのであれば、彼らの日常――――川のせせらぎと木々のささめきに包まれた、質素で穏やかな作業風景が、戻ってくるかもしれなかった。

しかし、当然ながら青年に彼らの胸中はわかるはずもない。桟橋の手前でチョコボに手で合図をして留まらせると、橋を軋ませながら、彼は赤毛の女に近づいていく。一瞬の息継ぎの間を狙って、青年が声をかけた。

「……演奏中にすまないが、少し良いだろうか」

音が止んだ。琴を撫でる指が、潤んだ唇が、歌とともに森に満ちていた囁きすら連れていってしまったような、一瞬の静寂。
女の身体がくらりと傾ぐ。突如声をかけてきた無粋者の顔を見ようと、顎を上げるついでに、彼女は桟橋の上に寝転んだ。輝く豊かな赤髪が絨毯のように広がって、そこから彼を見上げる瞳は、黒衣森の精霊にすら愛されたような木々の色をしている。俄に輝きを増した緑色の双眸は、驚愕のためなのか否か。
一方青年は、女の美しい見目と、綺麗に磨かれているわけでもない床板に容易く転がる、彼女の仕草との差異に少し驚いて、きょとりと――――最早言うまでもないことだが、彼の表情は本人が思っているほど変わっていない――――瞬いた。一拍の間を空けて、青年は次に言うはずだった言葉を引っ張り出す。

「……、……貴殿は、ゾーイ・マクグラス、で間違いないだろうか」

「…………」

女はしばらくの間沈黙していた。
膠着状態とも呼べる奇妙な時間が続いたあと、


「アウラだーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」


先程まで大事そうに抱いていた琴を放り出した指が、青年の足首を捉えんと恐ろしい速さで迫った。
水鳥を散らす歓喜の声。目にも見えない、気配を感じることすら容易ではない精霊の、驚いて跳ねた様子が分かりそうなほど、その叫びは森を揺らしたと言っても過言ではない。

対する青年の行動は一瞬だったが、多くの葛藤と判断がその間にあった。
戦い慣れた身体は、間違いなく女の動作を見逃さなかったが、その手から逃れるか、それとも彼女が高く投げた繊細な彫り物のある竪琴の落下を防ぐか。瞬間的に悩んで、結局彼は竪琴の傷を憂うことにした。
一歩を踏み出し、宙に放られた琴を大きな掌で掬うようにキャッチする。当然、捕まえに来る女の白い手に、自ら足を差し出す形になった。足首に襲い掛かる、美女が与えたとは信じ難い重い衝撃に、青年は驚いたが、やはり表情も体幹もびくともしなかった。

「…………」

何と言葉を返すべきか悩んで、足元の彼女を見下ろしている青年の後ろで、女の突然の大声に驚いた人々が、荷物を取り落としかけながらこちらを見ていた。青年のチョコボもまた、警戒するように円い瞳でじっと女を見ていた。
つまるところ、この場にいる全員の視線が、女に注がれているのであった。
しかし、熱く冷たい一斉の注目は、女にとって些細なことだ。否、些細にすら感じていない。まったく無きものとして、ただ彼女の興味は、目の前のアウラの青年に注がれていた。捕まえた足首からよじ登るようにして、「むほほ!」と下卑た笑い声を上げながら身を起こし、立ち上がる。豊満で女らしい肉つきの、あちこちが青年に当たりそうになるのさえ、彼女はちっとも気にしないようだった。

「ああーーーたまらない逞しさだね!!アウラの男はみなこういうものかな?それとも君が特別に鍛えて、おっ素敵な大臀筋……」

「…………、……」

青年にしては珍しく、眉根が見て解るほど寄り、眉尻が困り気に下がった。不快に思っているというより、不可思議なものを前にして、心から戸惑っている様子だった。

「…………よくわからないが、ゼラの男は多くが大柄で、逞しいものだ。生まれついたものもあるが、鍛えてもいる。そうでなければ、部族の男として生きていくのは難しい」

尻の辺りを撫でまわす手を押しとどめた方がいいのか、満足するまで好きにさせた方がいいのかわからず、半端に持ち上げた黒いグローブが宙でふらりと揺れた。彼の持つ常識には、痴漢という概念はあっても、痴女という概念がなかったために、まさか自分がちょっとした被害者であるなどとは微塵も思っていなかった。

「……話を戻すが、貴殿がゾーイ・マクグラスという者か?」

邪魔されないのを良いことに、女は、大柄な青年の腰あたりにへばりつくと、尻から尻尾の付け根を撫で回し揉み込んで。

「なるほど、」

すぅー。

「君は部族間で戦をするゼラだから、」

はぁー。

「そういった答えになるのか……」

すぅー。

アウラ族の香りを堪能しながら、うっとりと噛み締めるようにひとりごちている。
被害者の青年よりももっと衝撃を受けているのは、それまでやりとりを見守っていた周囲の人々で、それもそのうち見てみぬ振りをするようになった。あれはきっと厄に近い何かだ、と。
女の長い睫毛の先がやっと青年の顔に向いて、女神じみたかんばせがにっこりと笑った。

「そうとも、私がゾーイだ。そういう君は……さて、ゼラで男の知り合いはいないはずなんだけれど?」

「…、………そう、か」

流石の青年でも、気安く尻尾に触れられるのには堪えたのか、ミコッテと違いあまり振り回されることのない鱗の尾がふいと振られ、艶やかに手入れされた爪先から逃げる。力まかせに叩き落とすこともできたが、青年はそうはせず、大きな手でそうっと彼女の手を尾から遠ざけた。

「俺は………いや、名乗る前に、一度立ち上がってくれ。これでは従属させているようだ」

ついでに、取った手を支えにして、ぐんと彼女を引っ張り上げ、立ち上がらせる。滑らかな頬が腰の周りから離れて、青年は内心ほっと安堵した。無意識ながらに、彼でも落ち着かないものがあったらしい。

「おや」

女の執拗な手指や肢体は、意外なほど素直に彼の手に従った。まるで羽のように軽いものと扱われたのに驚いたのか、それとも比較的丁寧に扱われたのが久しいのか。とにかく一度行儀良く青年の前におさまると、艶やかな髪を手ぐしでまとめて、ゾーイはまた笑みを見せた。

「改めて。……俺は、エレルヘグ・ノイキンという。各国グランドカンパニーからの任務で、新人冒険者の幾人かを、小隊員として迎え入れ、指導することになった者だ。その勧誘に来た」

「エレルヘグか。エレン?いや、これだと女性的だな。ヘグかな?」

長い名前で呼びにくいと判断したのか、愛称の候補を連ねながら、ミッドランダー女性にしては高い背丈を触れるでもなくエレルヘグに寄せる。

「しかし、従属させているようだと言いながら、目的はそうじゃないのかい?この私に軍隊の真似事でもさせようと?」

「いいや。俺がこの小隊で望むのは、自身の支配による軍隊ではない。隊員が望むのであれば師弟関係を結ぶことは吝かではないが……。あくまでも、この隊の意義は貴殿らの支援だ。支援のための指導だ。貴殿らが問題なく、自身の腕と知恵で生き残れる冒険者となるまでは、俺がその身柄を預かり、保護し、教える。俺が強いるのはその一点のみだ。他に於いて、一切の強制はしない」

初対面にしては妙に近い距離であるにも関わらず、エレルヘグは怯むことなく、いつも通りの真顔でゾーイを見つめ返した。

「それを従属と取るのであれば、俺にこれ以上返す言葉は無いが……、……部族の長が、同胞を守り導くことが、従属だと、貴殿は思うか?」

「はぁーアウラがめっちゃ喋ってる……」

話を聞いていたのかいないのか、ゾーイは悩ましく頬を紅潮させている。決して初対面からなつかれやすいと言えないエレルヘグの表情に、まるでご馳走でも見つめているような眼差しを送って、ふとその視線が逸れる。恥じらいや気まずさからではない、ただ物を考える癖のようで、ゾーイは虚空を眺めた。

「ざっくり言うと、新人冒険者の支援、育成を任されている身ということか。なるほど、アウラになら奴隷にされてもいいと思っている私くらいしか、従属の意味を汲む奴はいないだろうね」

大理石の頬を添えた指で叩きながら、ゾーイは続ける。

「しかし、保護。ふふ、保護ねぇ」

「ああ、その通りだ」

自身の上手くはないであろう言葉繰りでも、言いたいことをきちんと解している様子に、内心感心しながら、エレルヘグは頷く。
ゾーイという女は、様子こそ不可思議であるが、美しいのみならず賢い女性であるようだ。何故か熱い視線を送られたり、身体を撫でまわされてはいるが、そこはそれ。長く冒険しあちこちを巡っては色んな人に出会ってきたエレルヘグにとって、その辺りは些細なことだった。十人十色という格言は、新しい誰かに出会うたび、彼の身に深く刻まれてきた。
ゾーイの含みのある微笑みを見て、エレルヘグは素直に疑問を――――声にも表情にも表れなかったが――――浮かべた。

「……何か気にかかるのであれば、尋ねてくれ」

彼の言葉に、ゾーイは笑みを深めた。その美貌は絵画的で、彫像的で、ゆえに女神にも悪魔にも見える。麝香の気配をくゆらせて、滑らかな指先がつとエレルヘグの胸を叩いた。

「いや、なぁに。君に任せられた新人冒険者は、保護するに値するのかな。と、思ってね」

「……?」

言っている意味がよくわからない、と言わんばかりに、緑の鋭い瞳が、少し丸くなったのが、近い距離に立つゾーイには見えた。

「勿論だ。今まで俺の勧誘を受けてくれた隊員たちは、皆それぞれ、生き残ってほしいと思える者たちだった」

胸に触れている指先ごと、エレルヘグの手がゾーイの手を包む。黒い革のグローブは、よく使い込まれて、堅いけれどやわらかな感触を彼女の肌に与えた。

「それは、ゾーイ。貴殿も同じだ」

言葉を探すように、一度緑の視線がゾーイの眼から外れ、そうしてまた戻ってくる。

「俺には、人の良し悪しを見抜ける眼などない。そもそも、何が善で何が悪だなどと、俺如きには断定できない。だが、そんなことは関係なく、貴殿らは皆等しく生きている。そして、これから冒険者という、過酷だが夢のある旅路へ向かおうとしているんだ。ならば、俺は貴殿らに、道半ばで斃れてほしくない」

そこまで言って、エレルヘグはごく小さく、唇を緩めてふっと笑った。

「俺が故郷を出、冒険者になったことを悔いていないように。貴殿らにも、旅に出てよかったと、そう思ってほしいんだ。そのためには、生き残らなくては。その手助けができるのであれば、いくらでも守る。手を貸す。……俺は、そう考えている」

エレルヘグの言葉は、誤魔化しがききようもないほど真摯で、愚直だった。表情も抑揚も乏しい、それでもグローブごしの体温と同じに、確かに熱を持つ。ゾーイはそれを、じっと見ていた。瞬きもしない、頬も動かさないまま。
やがて瑞々しい唇が、ゆっくりと開く。

「…………35点!!」

「……………さん……?」

何を言っている、と今度こそ如実に瞳が示している。彼らの後ろで、エレルヘグよりも先に彼のチョコボが不満そうにクエェ、と鳴いた。

「優等生すぎる。つまらない男だと言われないかい?アウラじゃあなきゃ張り倒してるところだ!」

呆れたように溜め息を吐きながら、ちゃっかり握られた手の感覚を揉み込んで堪能している。鳴いた賢いチョコボにウインクを送ると、ゾーイはやれやれと言わんばかりに首を振って。

「それは君が接触した者が、運良くそういう者だったからさ。そしてヘグ、君、実際会ってみるまでに、容姿や特徴以外の情報を集めたかい?性格や性癖、やりたいこと、やりかねないこと。会ってみてから、なんて考えてないだろうね。例えば私は同じ隊にアウラがいるとなれば寝込みを襲って性交渉するぞ?そういう摘める危険性の話をしているんだよ」

ずけずけと物を言いながら、豊満なバストをずいっと張り出す。

「人が良いのは間違いなく美点だ。疑いようもない。けれど過ぎれば君の可愛い雛たちの巣に、蛇を呼びかねない。……君自身には、すでに何度か降りかかった災厄があるかもしれないね」

「ああ……成程」

ショックを受ける様子でもなく、眉を顰めるわけでもなく、エレルヘグは納得した様子で頷いた。

「確かに、そうかもしれない。俺は機微というものに疎いし、騙されることも、騙されてきたことも少なくはないだろう。面白い男でもない。だが」

じ、と緑の眼が、ゾーイの同じ色を見つめ返した。そして、ふ、と重なっていた視線がぶれた。――――少なくともその瞬間、ゾーイにはそう思えた。

気づくと、彼女は再び桟橋に寝転がっていた。真上からゾーイの顔を覗き込み、エレルヘグは繋いだままの彼女の手を掲げる。衝撃もほとんどないまま、エレルヘグは一瞬の間にゾーイの身体をひっくり返し、抑えつけられる体勢にまで持っていったのだ。

「腕には少々自信がある。例え災厄を呼び込んでしまおうとも、それからすらも、貴殿らを守ってみせるさ。誓おう」

ゾーイの瞳が驚愕に見開かれたのも束の間、桟橋に背が当たるまでには高揚で輝いていた。少しも動けないのを身じろぎすることで確かめると、蕩けそうなほど熱く甘い息を吐く。

「随分と情熱的だね……」

舌で唇を湿らせれば、ぬるりと口紅が陽光に煌めいた。足が自由であったならば、当然のようにエレルヘグの腰になつかせていただろう。

「蛇すら喰らう鷹ならば、巣を守るのも難くないだろうね」

「ああ」

繋いだ手を引き上げ、背を支えながら再び彼女を立ち上がらせると、ひどく力を加減した手つきで彼女の背を払った。

「すまないな、いくら信じてもらうためとはいえ、引き倒してしまった。……見てもらった通り、力量には自信がある。とはいえ、貴殿の言うことは尤もだ。いつか力だけで払えなくなる前に、そういった危険を摘めるようにならなくてはな。そのためにも、貴殿には知恵を貸してほしい」

最後にゾーイの赤い毛先をそっと拭い、そよ風に泳がせると、エレルヘグは高い位置にある頭を小さく下げた。

「俺は、貴殿らに冒険者としての術を教える。貴殿は、俺が危険を回避できるよう、教えてもらえないだろうか?」

「…………ふっ……」

エレルヘグの手を借りて軽やかに立ち上がれば、待っているのはやはり淑女でも扱うかのような丁寧な手つきだった。くすぐったそうに小さく笑んで、蠱惑の唇を、麝香の気配とともに降りてきたアウラの鼻先に寄せる。

「本当につまらないな君は。これから時間を共にしようって相手をいつまで堅苦しく“貴殿”なんて呼ぶつもりだい?」

うっ、と彼が少し息を詰めたのが、この距離ならば彼女に漏れなく伝わる。エレルヘグは気まずそうに視線を泳がせた後、申し訳なさそうな――――真顔だったが――――表情で、言葉を絞り出した。

「……そうか。確かにそうだな……すまない、ゾーイ。……で、いいだろうか」

「よろしい!」

口付けそうな距離の唇の代わりに、指先をエレルヘグの鼻筋に滑らせた。それから踊るように身を離して、今日一番の良い顔で、ゾーイは両の手を打つ。

「さぁて、これからどうすれば良いのかな?隊員に挨拶?それとも何処かで酒でも?お互いをよく知るために一発シとく?」

後半は明らかに彼女の煩悩が漏れている。からから笑いながら、その指先が、先程まで抱えていた竪琴を探してうろうろし始めた。
ゾーイに触れていない片手でずっと抱えていた竪琴を差し出しながら、エレルヘグは触れられた鼻先を少しだけ擦った。

「そうだな、……あともう少しで、我々に支給されたカンパニー用の戸建てが完成する予定だ。その際には手紙でも書いて、連絡をしよう。その時に、家に来てくれれば、それまでは好きに過ごしてもらって構わない。それが正式な隊の発足時期となろう。リストには挙がっているがまだ接触できていない者もいるのでな。隊員との挨拶はその折に頼む」

ゾーイに放り込まれた欲まみれの発言に関して触れるでもなく、呆れるでもない辺り、残念ながら、彼が“つまらない男”を返上できる日は遠いようだ。
ありがとう、と笑顔で琴を受け取ると、ゾーイは差し出されたエレルヘグの腕をそのまま抱いて。

「それじゃあ酒かな!ゼラの文化がまだ今一つ分からなくってね。好みの酒を教えておくれ、ヘグ!」

意気揚々と、黒衣森南部を目指して歩き出した。目的はクォーリーミルの西に構えられた酒房、バスカロンドラザースだ。

「な、何?……構わないが……」

頭の中で、次の勧誘相手の情報を整理していたエレルヘグは、あっさりと腕を捉えられて踏鞴を踏んだ。
桟橋から出ると、心なしかじとりとしたチョコボの視線がゾーイに送られる。見た目こそ好い仲かと思わせる妙齢の男女ではあるが、その実を、賢い黒チョコボはよくわかっているようだ。
呆れる溜息のような、ふんすという鼻息を零して、引きずられていく主人を追う。その二人と一匹の足跡が、昼の黒衣森の中を、南へと下っていった。


CZoe.jpg

  • 最終更新:2018-05-14 07:40:05

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